「三題噺」部屋

祈り、葉、布 - Michiya

2010/09/07 (Tue) 23:44:49

第二十八回目のお題です。

sin - Michiya

2012/03/11 (Sun) 23:21:02

風と共に木葉が舞う。季節外れの木葉は、まだ青々とした色のまま、俺の頬を掠めた。
春の到来というのに、この葉は何故枝から落ちたのだろう。
生い茂る桜の木を見上げながら、俺は落ちた木葉をじっと見つめた。
お前は、この青葉が茂る頃にどうして木葉になったんだ?お前はどうして、兄弟達より先に生きることをやめたんだ?
遠くで聞こえる教会の讃美歌が、罪を懺悔する声に聞こえて、反吐がした。

兄さんが自殺したのは、三年前だ。
両親のいない兄弟四人で、末っ子の俺と長男の兄さんは同じ孤児院でそだった。他の二人は別の孤児院で、時折手紙を交わしているが、俺は彼等を兄とは呼ばないし、滅多に逢わない。
ミッション系の孤児院だった俺と兄さんは毎朝のお祈りを捧げていた。
だから、兄さんが毎日懺悔室に向かう姿や、熱心な朝のお祈りの姿に尊敬したものだ。
ただ、最初は敬虔な教徒だと思っていたが、自殺した今となっては罪の告白をしていたということが分かる。
両親は殺された。
両親もまた天涯孤独の身、駆け落ち同然で孤児院をでた二人の生活が必ずしも幸せだったとは言えないだろうが、俺は両親の元に生まれて良かったと思っている。
でも、その二人が殺されたのは突然すぎた。
布か何かで絞め殺された二人。
俺は、本当は家族のことを覚えていない。
幼かったこともあるが、両親が殺されるのを見ていたせいか、記憶がないのだ。
兄さんが両親のことをずっと教えてくれていた。
どんなに優しかったか、愛情に溢れていたか。
でも、兄さんはいつもどこか怯えていた。

讃美歌が止み、気付けば風も柔らかく俺の頬を撫でている。
なぐさめてくれているようで、俺は少しだけ、泣きたくなった。

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