「三題噺」部屋

制服、卵、秘密基地 - 科挙

2010/07/28 (Wed) 20:49:09

第二十四回目のお題です。

禁断(笑)2 - 加貝

2010/07/30 (Fri) 21:26:22

という訳でもう一回付き合って欲しい。
何って…決まってるじゃないか。愚痴だよ愚痴。
その前にとりあえず前に話せなかったから今の現状をもう少し喋ろうか。
俺と舞姉は同じ高校の一年生と二年生。
舞姉もさすがに高校では自粛してくれて、友人達には姉貴が俺のことを好きであるのをばれていない。
そのせいとも言えるが、家に帰ると舞姉は豹変する。
ずっと俺の行くところについてきて(普通に風呂の中までついてきたことがある)、幸樹が好きだと言ってくる。
そりゃ嬉しいよ?
人に純粋な好意を寄せられることに気持ち悪いと思うほど俺も人間壊れてはいない。
…でもな?
やっぱ姉貴なんだよ。姉弟なんだよ。
舞姉がいつも突拍子もないこと言ったりするのは分かってたけど…。
さすがにずっと言われたりされたら俺も疲れてくるわけよ。
そこでいつもより強く当たってしまった。
そん時の愚痴でも聞いてもらおうと思って…ね。

「幸樹~。幸樹はどんな家に住みたい?」
「は?いや、俺はこの家で満足してるけど?」
「そうじゃなくて、将来私と幸樹が住む家だって。」
「いや付き合ってすらないだろ?そもそもこの家に一緒に住んでるんだからいいでしょ?」
「そ~れ~で~も~。ほらほらこの後どうなるか分からないじゃない?」
「はい?俺が舞姉に惚れるとでも言うのか?」
「そのつもりだから♪」
「馬鹿なこと言ってないで。ほらふりかけ。たまご味でいいだろ?」
「もうちょっと真剣に話聞いてって。」
「……いい加減にしろ!!!」
「!」
「多少のことなら大目に見てきたけど、変な事ばっかり言ってんじゃねえよ!!」
「あ、ごめん。私…」
「いい加減他の男見つけろって!もう勘弁してくれよ。舞姉は言ってるだけでいいかもしんないけど、こっちはいつ友達にばれるかとかいろいろ気にしてんだよ!!」
「!…そんなわけ」
「とにかく飯食ってさっさと学校行くぞ!」
「そんなわけないでしょ!!!」
「あぁ!?」
「言うだけなわけないでしょ!私だって知らないよ!幸樹の言うとおりにできれば私だってこんなこと言わないよ!でもしょうがないでしょ!好きになったんだから!諦められないんだから!」
「い、いや、だからぁ」
「もういい!!!幸樹の馬鹿!!!」
「え!?ちょっ、舞姉!?」
「付いて来んなー!!。」
ばたばたと音を立てながら舞姉はどっかに行ってしまった。
「ったく。知らねぇ知らねぇ。…学校行くか」
俺はこの時特に何も感じなかった。どうせすぐに戻ると思ったから。

んで、その日の放課後に職員室に呼び出された。
「斉藤。ちょっと。」
「瀬崎先生?どうしたんですか?」
ちなみにこの人は舞姉の担任だ。
「お前の姉さん来てないんだけど…何か知らないか?」
「え?」
「何か風邪でも引いたのか?」
「分からないです…。」
「そうか。家に戻ったら聞いてみてくれ。まあ、あいつのことだ。心配はないと思うけど。」
「そうですね。」
このときでも俺は特に考えていなかった。珍しいなと思っただけだったんだよ。

いい加減におかしいと気づいたのは夜の八時を回ったときだった。
舞姉はどんなに遅くても七時には家に戻る。
それでもいつもなら連絡があるはずなのに連絡すらない。
「まさか…家出ってことはない…よ…な?」
そう思った瞬間俺は家を飛び出していた。

「舞姉ーー!!」
いろんなところを走りながら叫ぶ。
正直口の中はカラカラだし、足もパンパンだ。
それでも走るのを止めるわけにはいかない。
「ゼッ、ハッ、く、そ。何処行った、んだ?」
そういえば一度だけ舞姉が迷子になった。
あのときいたのは確か…。
「もう、場所がねぇ。そこにいろよ舞姉!」

昔よく二人で遊んだ川原。そこに少し大きい洞穴がある。
その中に子供の頃に二人で作った秘密基地。舞姉は多分そこにいる。
「よ、お。やっぱりここにいたのか、舞姉。」
「幸樹?何でここに?」
「はぁ?舞姉を連れ戻しに来たんだよ。とにかく戻るぞ。」
「え…お、怒ってないの?」
「…めちゃくちゃ怒ってるよ。」
「ご、ごめん…。」
「俺が怒ってんのはいきなり出て行ってこんな時間まで戻ってこなかったことだ。もう二度とするなよ、舞姉。」
「うん…。」
「それと、今朝は言い過ぎた。ごめん。」
「ううん。私が悪かったんだよ。弟困らしてさ…私お姉ちゃんなのにね。もうやめるよ。あんなこと言うのは。」
「別に…好きなだけ言っていいから。」
「え?」
「舞姉がこんなんで諦められるわけないだろ。好きなだけ言えよ。全部否定して完膚なきまでに叩き潰して諦めさせるから。」
「…うん。」
「と、とにかく戻るぞ。その制服だって泥んこじゃねえか。帰ったら洗うから。」
「…幸樹。」
「あん?」
「好きだからね。絶対諦めないから。」

ということがあったんだよ。
あの時はかなり焦ったぜ。
ま、今でも変わらずにアタックされてあしらっての日々が続いているよ。
悪いな。こんなに長々と聞いてもらって。
…は?今何て言った?
いや、違うから。惚気とかじゃないから。
ちょっと待て。お前俺の話聞いてたのか?何処をどう聞いたら惚気になるんだ?
おい、なんだよ。そのため息は。くそ、てめぇちゃんと俺の話を聞けーーー!!!

ひみつきち - Michiya

2010/07/30 (Fri) 21:30:14

子供の頃、私は男の子に憧れていた。
近所の友達に女の子が居なかったのでよく男の子と一緒に遊んでいたが、やはり男の子は女の子に隠し事をしたがる。
例えば、カエルがよく取れる場所だとか。
例えば、育てたカブトムシの強さだとか。
例えば、自分達が作った秘密基地だとか。
いつもそういうことは仲間はずれにされ、いつしか私は小学校へ行き、女友達と共に遊ぶようになった。
まるで、なかったことのように。

「里穂、七時よ~。」
母の声で私はガバッと起き上がる。
「やべっ…。」
私の家は学校まで遠いので、七時には家を出なければならなかった。なんとか一時間かけて学校へ行くので、この時間に起きるのはまずい。
私は制服を着ながらばたばたと髪を纏める。
「…邪魔くさい…。」
最近部活が忙しくて髪の毛を切りに行っていないな、と思う。
ざんばらに伸びたこの髪の毛は正直鬱陶しい。
ばたばたと階段を下り、私は鞄を玄関に放りながらリビングへと向かう。
「お母さん、パン!」
「はいはい。」
お母さんは基本的にマイペースだ。
ゆっくり、いつものペースでパンを焼こうとする。
「もう、お母さん!時間ないから、これ、貰ってくね!」
「あ、それお父さんの…。」
「まだリビングに来ていないからいいじゃない。」
「だったら目玉焼きを焼くわ。それくらいの時間はあるでしょう?」
あるわけがない。
卵を冷蔵庫から取りだそうとしている母をよそに、私はさっさと家を出ることにした。

タイムロス、十分。
私は自転車を漕ぐスピードを上げる。
「…近道しよう…。」
いつもは通らない、人通りの少ない道へと進む。
坂がきついので普段使わない道だったが、今はそんなこと行ってられない。
「はぁはぁ…。」
坂を上がった先には、幼い頃、よく男の子と遊んでいた空き地と、その隣に男の子の秘密基地のあった廃墟がある。
「ぜぇぜぇ…、…あれ?」
上がった先にあるのは、新しく建てられた二件の家で、昔の風景は残っていなかった。
「…空き地と廃墟、なくなったんだ。」
何かぽっかり穴が空いたような気持ちになる。
「…秘密基地、一度でいいから見たかったな。」
廃墟に作られたあの秘密基地。
最後まで見せて貰えなかったあの基地に、こっそりと入ってみれば良かったと心から後悔する。
寂しい気持ちが私を巡ったが、ただ、それだけだった。
多分、この秘密基地のこともいつか、思い出になる。
男の子と遊んでいたことを忘れて、女友達と遊ぶようになったように。

これが蓑坂クオリティ2 - 蓑坂 格差

2010/07/31 (Sat) 22:57:05

制服。
この制服にはかなり思い入れがある。
たった8カ月しか着れなかったが。

私は今、病院で独りぼっちだ。
見舞いに来る友達は、もう帰った。
この時間が一番つらい。
こんなことなら、見舞いに何か来てほしくないと思う程。
しかし、こんな気持ちになる……いや、なれるのも今だけだ。
私の病気が見つかったのは、小学生の頃だ。
私は、学校を忘れていた。
行くのをとかではなく、根本的に、だ。

私には、記憶というものが分からない。
何かを覚える。
それが分からない。
だって、何も憶えたことがないから……。
今日も友達が来たが、思い出せない。
どこかで会ったかどうかさえ。
でも、この制服だけは覚えている。
私の、高校生になった……高校生だったことがある証しだから。

秘密基地をいうものがあるらしい。
私も、作ったのかなぁ。
近所の子供たちと一緒になって。
皆が体験する当たり前のこと。
私もやったのだろうと思う。
しかし、思い出せない。
何も、思い出せない。

「今日のご飯は何でしたか?」
多分、いつも通りの問診。
「卵焼き」
「それだけ?」
「はい」
彼女は、何かを書きこんでいる。
「分かったわ」
何が分かったというのだろうか。
聞いても仕方がないのでやめる。
今日は、誰も来ないらしい。
ゆっくりと横になる。

私は、夢を見た。
暗い部屋で、独りぼっちの女の子。
カタンと音がして、その女の子は唯一光のさしこむところへ向かっていく。
そこは、横に長い長方形の隙間。
そこから差し出されたのは
卵焼き。
今日も卵焼き。
おそらく明日も。
いつから卵焼きだったのかを考える。

そこで目が覚めた。
答えを手に持ったまま、夢から覚めてきた。
生まれた時から、卵焼きだったじゃないか。
記憶がないんじゃない。
そもそも、何もやってないのだ。
私は、何もない暗い部屋の中で、今日もまた妄想の世界に入る。

Re: 制服、卵、秘密基地 - 科挙

2010/08/04 (Wed) 21:50:46

彼は一学期の終わりに突然やってきた。
第一印象はなんてことはない平凡な男子のように思えた。
数日するとクラスで、皆の質問攻めに愛想よく答え、他の男子と一緒にドッヂボールに興じ、女子と世間話を軽くこなすよく出来た少年であると認識された。

その頃私は簡単に言うとクラスから浮いていた。
クラスメートの言動や制服が似合わない幼さは早熟であった私には苦痛だったし、一人でいることが苦でなかったのも拍車をかけた。
そんな私に、ある日あの転校生から置き手紙を貰った。
その時の手紙を私は当分忘れられないだろう。

僕と二人で秘密基地を作ってくれない―――?

「一体、どういうつもり?」
「ああ、手紙読んでくれたんだね」
「質問に答えて」
「クラスで一番僕に似ている君と秘密基地を作りたい」
と言って口を挟もうとする私を遮って続ける。
「失礼な話だけどね、僕はクラスの皆のことは正直どうでもいいんだ」
思わず黙る私を尻目に彼は続ける。
「僕は僕の表面と仲良くする大勢の人よりもね、僕の深層を理解してくれる1人の人と一緒にいたいんだ」
「…私が貴方を理解できる、とでも言うつもり?」
「うん。少なくとも僕が知る限りでは誰よりも」
「…その考えって酷いわ。惨たらしい」
「そりゃそうだよ。だから僕は君に返事を聞いているのさ」
…私が彼を理解するのに足り得た人間であるかは非常に怪しい。
しかし、それでも。
「…自覚してるだろうけど貴方って相当面白いわ」
私は、私と交流するに足り得る人を手放したくはなかった。

場所は繁華街から少し離れた廃ビルの三階の一室。
そこで二人の秘密基地の活動は始まった。
まあ、二人とも来て話をするだけのものだったけど。
彼が私の話に頷いてくれたり、彼の話を聞いたときに見る彼の満足そうな顔が、私には幸せだった。
しかし、どんな楽しいひと時もあっさりと破滅が訪れる。
私たちは幼かったが聡明だった。
しばらくして自然に始まった交際は、それゆえに起こる。
私たちは、聡明ではあったが幼かった。
それゆえに私たちは、あっさりと秘密基地を奪われた―――。

私たちは秘密基地で大人たちが危惧するようなことはしていない。
そんな理屈は、大人にとってはどうでもよく、
結局私たちは引き離された。

最後に話す機会があったときの彼の台詞は、まだ忘れることは出来ない。

ありがとう。君は十分に僕を理解してくれていた。僕はきっと今ある幼さを捨ててみせる。だから、再び巡り会うことが出来た時には、また、一緒にいよう――。

もっとしたたかになってやろう。私も私を閉じ込める幼さという殻を破って卵から何が何でも孵化してやろう。そうすれば、

私たちはきっと巡り会える。きっと。

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